新規 2000年02月13日
患者は不眠症だった。
かなり重度な症状で、イビキをかきつつ眠るのだが、目がパッチリ開いたままである。 患者 彼には自覚が無い様である。眼球の強制調整や強制マッサージを施すが、すぐに元に戻ってしまう。本当に重症である。
同じような患者を持つ者が言う。 「それも個性だと思うようにしてる」
まるで、テレビCMのような発言に思わずなるほどとうなずこうと思ったが、やはり、病気は病気だ。 風邪ひきを「個性的だね」なんて言う奴はいない。
だいぶ付き合ってきたので、非常に躊躇していたのであるが、このままでよい筈はない。
手術を決意した。
さて、まずは患者の外骨格を取り外さねばならない。毛皮 しかし、この患者は鉄壁のガードを誇る。ネジが見当たらないのである。通常、ネジ止めした部分がシールなんかで隠してあったりするものなのであるが、見当たらない。完全に手術を拒否なのである。
しかし、注意深い人であるなら、ある事に気がつくであろう。患者はベルトを着用しているのだ。このベルトを外せば何か弱点が見えるのかもしれない。ベルトを注意深く外す。
老婆心ながら忠告する。ベルトを解こうとするならば、そのベルトの正体をしっかり把握し、どこで購入できるか確認できていなければならない。患者を元に戻す事が出来なくなる。
さて、ベルトを解くと、下半身から毛皮を剥ぐ事が出来るようになる。剥いだ結果が右の写真だ。
だがこれも簡単には剥ぐ事が出来ない。一気にすべてを剥ごうとすると二度と戻せなくなる。何事も慎重に行うのが成功する秘訣。
患者は頬骨近辺にネジを埋め込んでいた。更に、頭部をフックと接着剤で固定している。失敗すれば当然、毛皮が失われる。
老婆心ながら警告する。患者のバージョン・リビジョンでこのあたりの構造が違うかもしれない。この記述をそのまま信じない事だ。もし手術する気が無ければ別だが。
外骨格を剥いだ際、患者が急に暴れ出した。ちゃんと教科書にしたがって麻酔をかけたのだが…… 外骨格排除後の姿
左の写真は、外骨格を剥いだとたんしゃべり出した図である。どうしてなのかは不明だが、とにかくしゃべり出したのである。
きちんと覚悟が出来ているならそのまま会話するのも一興である。が、ほとんどの場合、気味の悪さを感じるんじゃないだろうか。あの愛らしい外観が全く無くなっているのである。
ここでハマッていた者は急速に退いていくかもしれない。声と外観のギャップは相当のもんである。
術前には麻酔をかける(電池を抜く)様にするべきだ。これをお勧めする。
以下はパーツを取り去った様子である。
分解後・前分解後・後
光センサーやマイク、スピーカー、各所のスイッチ。構造が次々に明かされて行く。 思った以上に構造が複雑だ。ギアが予想より多く、カムがギアの回転角度にしたがってスイッチを押したり、開放したり。
患者を診察した際、「カツンカツン」と何かを引っかける音がしていた。ギアの回転を抑止するリミッターが有効に働いていないのであろうという予測はしていた。
が、狭いところに集中して集められているので、最終的に原因がつかめなかった。 一応、原因が、あるスイッチの接触不良により引き起こされる事を確認できた。が、発生条件がうまく見つけられないのだ。もしかするとギアが変にねじれているのかもしれない。
タイムオーバー。これ以上は部品紛失等で患者を再生できなくなる。
ちゃんと縫合手術は成功。おつかれさま、ラルーラ君。(ファービーの名前。かぁーいーでしょ!)